デジタル化の進む時代の変化に伴い、新聞や雑誌を始めとする紙媒体メディアは衰退の一途を辿っている。この紙媒体メディアが復活することはあり得ることなのだろうか。
〇新聞の発行部数
新聞の発行部数に着目をすると21世紀の初め、平成13年(2001年)の一般紙発行数は4740万部、スポーツ紙は630万部発行されている。令和元年(2019年)の一般紙発行数は3487万部、スポーツ紙は293万部発行されている。一般紙は26.5%、スポーツ紙は54.5%の減少だ。(発行部数は日本新聞協会HPより)
スポーツ紙の減少数は深刻であることが分かる。一般紙も1年あたり70万部近く減少しており、新聞発行数が増加することは部数の推移からではまずありえないと言ってもよいだろう。
〇新聞広告の価値減少
新聞広告費と広告量に注目する。平成13年の新聞広告費は1兆2027億円、令和2年の新聞広告費は4547億円だ。新聞の発行部数は減少に伴い、広告費も減少している。
新聞の総発行数は約30%減少したが、広告費は約62%減少している。
新聞の広告量は629万段から470万段で約25%の減少だ。広告量の減少以上に新聞の広告費が減少している。これは即ち、新聞広告の価値が減少していることを示す。
(広告費・広告量は日本新聞協会HPより)
このように新聞そのものの需要の減少と広告としての価値の減少が起きている現段階では紙媒体メディアの復活は、デジタル媒体の完全消滅が発生しない限り起きないだろう。そのデジタル媒体の完全消滅が発生する可能性は日本中の通信機能が長期にわたって壊滅し、発信側・読み手のいずれかの情報の送受信に困難が発生した場合にしかありえない。その規模の事件が発生するとしたら日本全体が壊滅するほどの大災害程度であり、非常に非現実的なのは明らかだ。
〇新聞社の認識
もちろん新聞社も馬鹿ではない。学歴が非常に求められる職業であることでも知られる新聞社の職員は新聞発行数の減少や経営状況の悪化を当然のように把握している。把握していない企業があればどんな企業でも消滅する。
新聞社は発行部数が減少することへの対策として「時代に合わせた変化」を選択した。朝日新聞や日経新聞など、大手の一般紙が有料電子版の配信を行い、そのほかの一般紙やスポーツ紙も無料でインターネット上に記事を公開している。
「紙では負ける」という認識があるからこその対応であることは明白だ。
〇無料公開分の収入
では無料公開されているインターネット上の記事が多数を占める新聞社はいかにして収益を上げているのだろうか。紙媒体の時には購読料+広告料で収益を上げていた。インターネット上でよく見られるのが商品やサービスを紹介する「バナー広告」だ。多くのブログサービスや無料アプリケーションでも採用されている。
そのほかにもメディア独自の広告手段が採用されている。いわゆる「ステマ記事」と呼ばれるステルス・マーケティングによる特定のサービスの宣伝であることを隠して行われる広告記事や、「タイアップ広告」と呼ばれるメディアが広告の制作に協力し、あくまで記事の一つかのように見せて宣伝する広告だ。
実際に報道機関が大手携帯通信三社の通信速度を東京メトロ銀座線で比較した記事が掲載された。記事の内容は三社の通信状況を比較し、auが最も通信速度が良いとするものであった。記事そのものがauによる宣伝の記事であり、auが依頼をして掲載したものである。
このように無料コンテンツに宣伝を織り交ぜて広告収入を得ているのだ。
このような手段で広告収入を得るということは事実を公平に報道するという報道機関の役割を果たしているとはいえず、信用を減少させることになる。信用を減少させるということは企業に対する顧客が減少する。
顧客が減少すれば、一人、また一人と新聞購読者が離れることになる。そういったところからも紙媒体の復活は不可能だといえるだろう。
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