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【書評】中野晃一著「右傾化する日本政治」を読んで

上智大学国際教養学部で教授を務める中野晃一氏の「右傾化する日本政治」(岩波新書・平成27年)を読んだ。

冒頭は日本の自民党政治の移り変わりについて触れられており、当時を知らない私にとってはこれまで学んできたこととは違う一つの視点を学ぶことができた。

しかし、その一方で第二次安倍政権についての記述はそれまでの自民党政権に関する記述とは大きく異なるものであった。安倍元首相については復古的国家主義で歴史修正主義者あるという意見を表明し、安倍元首相は対外的なプロパガンダを敢行しているという内容が主だった。その他にも日本維新の会を新・極右政党という形で記述している。

中野氏はシールズの活動に顔を出すこともある左派的教授のひとりであり、安倍政権に批判的論調であることは十分に理解ができる。私もそのことを事前に承知の上で読んでいた。しかし、日本維新の会を極右であるとするならば、例えば日本国民党のように更に右側に踏み込んだ政党についてはどのように評するのだろうか。

また、安倍元首相が復古的国家主義で歴史修正主義者であるというように評しているが、復古的国家主義の基準は何か、歴史修正主義者というが「修正」という言葉は「不十分・不適当と思われるところを改め直すこと。」とある。すなわち、歴史修正主義者は歴史の不十分な点・不適当な点を改め直す者ということになる。歴史を正しい方向に改め直すのであれば何も問題がない。仮に安倍氏にとって不都合となる事を改めているのならば文頭でそのことを示すべきである。

このようにこの本は自民党政権の歩みについて一定数新しい視点を取り入れることができるが、その一方で表現の一部が不適当であったり、評価が極端なところがあったりする。彼の授業を受ける学生はその授業を受けて何を考えるのか気になるところだ。

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