今月5日に中公新書から「マスメディアとは何か 『影響力』の正体」(稲増一憲著)が刊行された。その中に次のような一節がある。
「マスメディアにとって極端に右あるいは左に寄った報道を行うということは、潜在的な視聴者や読者を減らす自殺行為になりうる」(P114)
書内には実際の実例が出てこない。マスメディアについて稲増氏は「多くの一般の人々に大量の情報を伝達するメディア」と定義している。明確な基準こそないものの、発行部数は1万部単位となる各新聞社は該当するのではないだろうか。
その際に実際に議論の対象として考えることができるのは神奈川新聞だ。神奈川新聞はコラム「時代の正体」を通じて右派運動の一部を「ヘイト」と関連付けている。左派勢力によっておこなわれる右派運動への「カウンター」に参画・擁護する場面もある。
現状神奈川新聞の購読数ば減少傾向にある。平成28年には約18万部であったが、平成31年4月には約17万6千部となっている。令和3年2月には約17万部だ。こうした減少傾向は他の新聞でも同じように起きており、決して神奈川新聞だけが減少しているわけではないことに留意する必要がある。(参考⇒神奈川新聞HPの部数が更新されず 広告出稿者に誤解の可能性)
日本新聞協会によると、平成28年の一般紙の部数は約3876万部、令和3年は約3065万部であった。令和3年の発行部数は平成28年に比べ約21%減少している。神奈川新聞は約6%の減少に留まっている。
勿論、読者減少の理由や高齢化や過疎化、新聞以外の情報収集手段の活発化などもあり、たんなる政治的論調に限った話ではないため、一概に比較はできないだろう。しかし、こうしてみれば一般と比較した際に読者数の減少率は少ない。稲増氏の主張に誤りが生じている、または実際のデータが不足している可能性も否めない。
こうしたデータを用いた実証をおこない、メディアや影響力の「正体」の分析がおこなわれることを期待したい。
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