日本は現在、憲法9条の定める戦争放棄によって一切の交戦権を有しないとされている。自衛隊も「自衛のための実力」として存在し、正当防衛以外の任務に当たれないとされているのだ。
この「正当防衛」が敵基地攻撃能力を有しないとする考え方もあり、現在は能力を有するべきかどうかで意見が割れている。その他にも自衛隊を憲法の中でどのように定義をするか。そうした議論がおこなわれている。
では、この「正当防衛」は日本の刑法においてどのように定義されているのだろうか。正当防衛に関する記述は刑法36条1項に規定されている。憲法と一法律ではその立場こそ異なるが、その正当防衛の考え方を国防に反映させても良いはずだ。
山口厚「刑法入門」(岩波新書,平成20年)によると「正当防衛はいわれのない攻撃をしようとしているものにのみ認められる」「攻撃から逃げることができても、攻撃者に立ち向かって反撃することが許される」「攻撃者が加えようとしている侵害よりも重い侵害を加えることも場合によっては許される」とある。前掲書が平成20年に書かれたもののため、現在では多少の誤差があるかもしれない。
この解釈をもとに考えれば、敵基地攻撃能力は3つ目の「攻撃者が加えようとしている侵害よりも重い侵害を加えることも場合によっては許される」の際に必要であり、日本は保有するべきだろう。しかし、人権侵害の際の緊急避難の一部としての正当防衛と国際外交のカードの一つである戦争は同じような運用は難しいかもしれない。
1つ目、2つ目をそのまま受け取れば自衛隊の存在は必要不可欠である。特に日本の周辺国は核保有国や経済制裁国、日本の領土を不法占拠している国家、日本の領土を虎視眈々と狙う国家で溢れている。いついわれのない攻撃が待ち構えているかわからない。
こうした解釈も現状の憲法においても可能だ。最も、日本国憲法を改正する中で、日本の国防、安全保障に対する位置づけを明確にする必要があるだろう。
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